2023年第4回診療所事務長会

急成長する医療法人グループの人材定着術

ポンコツ事務長が明かす組織づくり

 

9月13日に開催いたしました2023年第4回診療所事務長会では、診療所事務長会理事で、整形外科クリニック8院を展開する医療法人隆由会の事務長である原恭輔が「組織づくり」をテーマに、法人で実践している内容を話しました。自身を「ポンコツ事務長」と呼ぶ原事務長の経歴から法人の取り組みまで、笑いを交えた和やかな会になりました。

今回は残念ながら参加できなかった方のために、セミナーの一部をこちらで報告させていただきます。また、セミナーの詳しい内容は、月刊「クリニックばんぶう」11月号にもレポートされる予定です。お楽しみに☆

 

■原事務長は異色の経歴の持ち主

 原事務長は柔道整復師と鍼灸師の資格を取得して、医療法人隆由会にリハビリ職員として入職しましたが、4年8カ月でいったん退職しています。その後はドラッグストアに勤務して登録販売者の資格を取得し、地方公務員を目指して採用試験を受けたり、一般企業の採用試験を受けたりしていましたが、なかなか決まらず……。そんなとき、古巣の医療法人隆由会 大瀧隆博理事長から「戻ってこないか」と誘いを受けたのを機に事務長として復職しました。

 以後、自賠責保険や労災の請求業務や新規個別指導などの行政対応を中心に、事務長としての職域を広げており、分院展開にも関わっています。

 

■分院立ち上げから譲渡にも関わる

 同法人では、これまでに整形外科のクリニックを8院新規開設し、うち3院は譲渡済です。分院は法人として立ち上げ、集患など軌道に乗った後、そのまま管理医師に譲渡するスタイルで承継してします。当初は分院を増やして法人規模を拡大する方針でしたが、医師の継続雇用や確保が難しいと実感し、開業支援型の分院展開に方針転換しました。法人のノウハウを生かして分院を開設することで、どの分院も開院1年目で100人を超える外来患者数を達成。2020年2月には法人全体(当時6院)で1150人の外来患者数を記録しました。

 

■急成長の裏にあった失敗

 こうした急成長の裏には、多くの失敗もあったと原事務長は振り返ります。院内の雰囲気がギスギスしていたり、それによって人材が定着しなかったりするなど、組織における課題が多くありました。その課題を解決するため、組織行動学や倫理経営の導入、法人理念の周知に取り組んできました。具体的には、明確なルールを作り、プロセスよりも結果を重視した経営を行う方針にシフト。大瀧理事長は「自らスタッフとの縁は切らない」「スタッフに感謝する」「企業理念を周知する」と決め、毎朝法人全体でzoomをつないで法人理念に関する1分スピーチを実施。週替わりで分院を訪問して、スタッフと直接交流する機会も持つようにしているそうです。また、外部のカウンセラーとコーチングスタッフが介入する「人材開発」プログラムも採用し、月に1度、スタッフが自らの仕事を振り返り、目標やその達成度を確認したり、本来の能力を発揮するための課題を掘り起こしたりする研修を続けています。こうした取り組みの結果、本院では直近1年3カ月で常勤スタッフの離職ゼロを達成。また、クリニックの成長には適正な人員が必要という考えのもと、新卒人材を採用するため専門学校への営業にも注力しています。

 

■次回は11月18日(土)15:30~18:30 特別編「事務長サミット」を開催

2023年5回目の診療所事務長会は、特別編と題して会場参加型の「事務長サミット」を開催いたします。クリニックだけではなく病院も擁する法人の事務長が登壇するほか、社会保険労務士や弁護士、税理士などを交えて事務長のお悩みをディスカッションしながら進行します。申込はスタートしていますので、ふるってご参加ください。

また、診療所事務長会では、今後もさまざまなセミナーを開催していきます。聞きたいテーマやご要望などがありましたら、ぜひ「お問い合わせ」フォームよりご意見をお寄せください。